2016年6月21日火曜日

公共交通機関はぜいたく品?

【学問のミカタ】公共交通機関はぜいたく品?


経済学部准教授の野田と申します。専門は環境経済学、環境政策論です。
今日は私が、「乗り物」をテーマに執筆します。よろしくお願いします。

東京に住んでいると、JRだけでなく私鉄さらには地下鉄まで、実に多くの路線で電車を利用することができます。また路線バスも無数に走っています。これらの鉄道やバスは、皆の役に立つという意味で公共交通機関とよばれ、その料金は比較的安いですよね。たとえば国分寺から横浜中華街に行くとき、一番安いルートで890円(1時間ちょっと)になります。私たちは日々、公共交通機関の利便性を享受しており、それを当然のものと考えています(逆に、電車の遅延でイライラしますよね)。

しかし日本全体で見ると、このような利便性の高い公共交通機関はぜいたく品といえるかもしれません。地方都市になればなるほど、公共交通機関ではなく個人所有の自動車が移動手段の要となります。実際、地方鉄道事業や地方バス事業の多くは赤字であり、その存続が厳しいものになりつつあるようです。この問題の専門家のひとりは、次のように指摘します。

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「地域公共交通は、『自家用車への過度の依存による乗客減少⇒事業者のコスト削減によるサービス低下⇒一層の乗客減少』という負のスパイラルに陥っている。」(岡本常将(2009)「地域公共交通の活性化について―富山・金沢を事例に―」『レファレンス』20096月号、63頁)
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この問題には、東京と地方との経済格差(東京への一極集中)という経済問題が深く関わっています。公共交通機関をぜいたく品とすることなく多くの人に役立たせるには、どうすればよいでしょうか。解決案のひとつが、古くて新しい路面電車、今風にいえば、LRTLight Rail Transit)です。


 熊本市の路面電車

熊本市や長崎市の路面電車は有名ですし、その地域の文化的価値をも高めています。また、まちづくりの柱としてLRTを導入した場所としては、アメリカ合衆国オレゴン州のポートランドや富山市なども有名です。環境重視の時代変化にあわせて、大都市圏が捨てた古い公共交通(路面電車)が見直され、新たな付加価値が与えられようとしています(東京の路面電車は、都電荒川線で運用されています)。


 ポートランドのLRT

皆さんもどんどん路面電車を利用してみてください。利用者が増えればそれだけ鉄道事業者の収益が良くなり、路面電車の持続可能性が高まります。そのためにも、ぜひ多くの都市に行って楽しんで欲しいと思いますし、わたしたちは観光者として地方経済に貢献できるのです。


最後に、私がいま気になっていることを書き留めておきます。近年、外国からの観光客が増加しております。新幹線に乗ると、彼ら/彼女らは大きなキャリーバックをどこに置いて良いのか迷っている風景を目にします。もし今後も外国からの観光客を増やしたければ、この「バック置き場問題」の改善(保管場所の増設など)が必要になるかもしれませんね。

【他学部のブログ紹介】
経営学部:「車が減ると駐車場は要らなくなる???」
http://tkubiz.blogspot.jp/2016/06/blog-post_13.html

コミュニケーション学部:「「乗り物」をデザインする力」http://comtku.blogspot.jp/2016/06/blog-post_19.html

現代法学部:「ベビーカー問題にみる、子育て環境のバリアフリー化について」
http://genho-tku.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html

センター:「急ブレーキは危険です」
http://tkucenter.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html