2016年4月24日日曜日

【学問のミカタ】 誕生月と成績との関係とは!?


経済学部の安田宏樹と申します。今年度から経済学部のブログ作成に携わることになりました。よろしくお願い申し上げます。

全学部コラボ企画「学問のミカタ」、2016年度4月のテーマは「春」です。東京経済大学でも4月1日から新年度がスタートし、キャンパスは非常に活気づいています。「新年度がスタート」と書きましたが、実はこの「年度」が経済学的に非常に大きな意味を持つことが分っています。今回はそのことをご紹介します。



日本では4月から新年度がスタートしますので、4月から6月生まれの児童・生徒は相対的に「早く生まれた」グループになり、(翌年の)1月から3月に生まれた児童・生徒は(一般的に「早生まれ」と呼ばれますが)相対的に「遅く生まれた」グループになります。


この誕生月によって、成績に差があることが多くの研究で明らかになっています。具体的には、4月から6月生まれの児童・生徒は相対的に成績が良く、1月から3月生まれの児童・生徒は相対的に成績が良くないという結果が出ており、このことを「相対年齢効果」と呼んでいます。




例えば、東京大学の川口先生と一橋大学の森先生の研究によると、相対年齢効果は小学生、中学生、高校生のいずれにも観察されるといいます。また、一橋大学の小塩先生と新潟大学の北條先生の研究でもアジアの5か国(日本、韓国、台湾、香港、シンガポール)すべてで相対年齢効果が確認されています。

では、相対年齢効果は学力だけに見られるのでしょうか。この点を昨年度の安田ゼミのゼミ生が研究テーマに選びました。調査対象は、2015年のJリーグ登録の1406名(外国人選手を除く、J1J2J3の全選手)とNPB登録の全選手745名の誕生月です(結果は図1・図2)。


1 Jリーグ登録全選手(N1406)の四半期別割合(%




1から、4-6月生まれの選手が多く1-3月生まれが少ないという、相対年齢効果が存在していることが分かります。



2 NPB登録全選手(N745)の四半期別割合(%



また、プロ野球選手に関しても、4-6月生まれが多く1-3月生まれが少ないという、相対年齢効果の存在が確認されました。


では、反対に1-3月生まれに多い職業はあるのでしょうか。こうしたことを調べるだけでも素晴らしい卒業論文のテーマになると思います。読者の皆さんも是非機会があればゼミに入り、関心のあるテーマで論文を書くチャレンジをしてみて下さい。




最後に強調しなければならないことは、相対年齢効果の研究は、偏見を助長するために行われているわけではないということです。むしろ年度を何月からスタートしても必然的に相対的に生まれ月の早いグループと遅いグループが出てしまうのですから、相対年齢効果を縮小させるような政策や施策、配慮が必要ではないかということで今回ご紹介しました。


ちなみに、今年度の安田ゼミのゼミ長である栗原君は41日生まれです(一学年は42日生まれから翌年の41日生まれの児童・生徒で構成されます)。同級生の中で最も生まれは遅いですが、先頭に立ってみんなを引っ張ってくれています。


参考文献


川口大司・森啓明(2007)「誕生日と学業成績・最終学歴」『日本労働研究雑誌』No.569, pp.29-42.

小塩隆士・北條雅一(2012)「学力を決めるのは学校か家庭か」樋口美雄・財務省財務総合政策研究所編著『グローバル社会の人材育成・活用』第2章, 勁草書房, pp.68-90.

植松・上石・涌井・大久保・斉木(2015)「誕生月がプロスポーツ選手に与える影響」『2015年度安田宏樹ゼミナール研究論文』.


                            投稿者:安田宏樹

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【経済学部】「誕生月と成績との関係とは!?」
【経営学部】「春に売れるものって何?」

【コミュニケーション学部】「春をつかまえる」
  【現代法学部】「住民と市民」
【全学共通教育センター】「春の星座」
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2016年3月22日火曜日

卒業前の出費はどうする?


全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、3月のテーマは「卒業」です。卒業は、する側だけでなく、送り出す側にとってもいつでも感慨深いイベントです。この春に卒業するすべての皆さん、卒業おめでとうございます。

 

大学での講義の履修や就職活動などを終え、あとは卒業を待つのみというという時期は、人生で最も自由な時間の多い時期の一つではないでしょうか。私のゼミ生も、卒業旅行に行ったり、運転免許を取ったり、趣味に没頭したり、最後のバイトにまい進したり、企業の研修や資格取得の勉強に勤しんだり、それぞれに有意義にすごしているようです。

 

しかし、貴重な時間を有意義に使おうといっても、免許や資格の取得にしろ、卒業旅行にしろ、趣味にしろ、時間だけでなく、お金もかかります。バイトの資金で賄える範囲であればいいのですが、そのためにバイトを増やすとなると、せっかくの自由な時間の方が減ってしまう。悩ましいところです。

 

こうした需要に対し、いくつかの金融機関が提供しているのが、内定者ローンです。これは、通常、安定した収入がなく、そのためローンを組むことが出来ない学生の立場であっても、卒業間近の内定者であれば、現時点での収入がなくても、近い将来の収入が見込めるため少額であればローンが組めるというものです。

 

ただし、当たり前であり、かつ重要なことですが、まだ社会人として働いてもいない段階で、ローンを組むということには大きなリスクがあり、その利用は極めて慎重に判断する必要があります。特に、たとえそれが一生残る大切な思い出、大切な友人との絆となるイベントであっても、卒業旅行などの一時的な消費のためのローンということになると、その賛否は、人によって、ケースによって大きく分かれることでしょう。

 

しかし、一方で4月からの仕事に必要な投資のための資金を得るためのローンということであればどうでしょうか。典型的な例は、首都圏以外の地域での車の購入です。公共の交通機関が充実していない地域では、通勤や生活そのものに車が必須であるケースが多くあります。このようなケースでは、4月に仕事が始まる前の、新生活の基盤を整えておきたい時期に車購入のためのローンが組めることの意義は大きいのではないでしょうか。

 

実際、今年度の私のゼミの学生が、このテーマをレポートのテーマに取り上げ、調査をしたところ、マイカーローンに関する内定者ローンを実施している金融機関の方が、卒業旅行のための内定者ローンを実施している金融機関よりかなり多いとのことでした。

 

いずれにしろ、金融を利用する場合には、返済可能かどうかとともに、得た資金の使途の意義についてもしっかりとした考えを持ったうえで行う必要があるということですね。その意味で、実は卒業前のこの時期から既に一人の社会人としての判断力が問われている、と言えるのではないでしょうか。

 

卒業される皆さんの活躍を心から期待しています。

 

投稿者 石川雅也

2016年2月24日水曜日

プレゼント、寄付、ボランティアと取引行動


全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、2月のテーマは「バレンタインデー」です。私も思春期の頃は214日が近付くとそわそわしつつも、大抵は何も起きずに終わる、というふうにかなり意識だけはしたイベントでしたが、いつの間にか何かを期待するということもなくなっています。まあ、何も起きずに終わるとこは今も当時と同じですが(苦笑)。

また、私個人だけでなく、世間においても、一昔前ほど町中がバレンタイン一色に染まるという感じでもなくなってきたように感じます。クリスマスは依然健在であることを思うと、そこにも何か理由があるのかもしれませんね。

 

ところで、日本においてバレンタインデーは、多くのケースで女性が男性にチョコレートなどをプレゼントする、というイベントであると思います(もちろんそうでない場合もあります)。プレゼントとは、言うまでもなく、恋人や友達、お世話になった人などに贈り物をすることです。贈り物ですから、基本的には無償で相手にこちらの財やサービスを提供する行為ということになります。


これに対し、通常の買い物や投資などの取引行動の場合は、互いの合意の下、こちらからも財やサービス、金銭のいずれかを相手に提供するかわりに、相手からも財、サービス、金銭のいずれかを提供してもらうものであり、交換が行われます。

 

また、プレゼントの場合は、大抵の場合、贈る相手は、贈る側が深くかかわっている人物となりますが、人は、自身が必ずしも直接的に深くかかわっているわけではない相手に、財・サービス、金銭を提供することもあります。寄付やボランティアがそれに当たります。

 

つまり、取引においては、契約上、双方が何らかの財やサービス、金銭を得るのに対し、プレゼントや寄付、ボランティアでは、片側のみが得ることになります。ここにのみ注目すると、取引は利己行為、プレゼントや寄付、ボランティアは利他行為ということになります。しかし、もう少し深く考察してみると、そう単純に言い切ることは出来ないことが分かってきます。

 

例えば、プレゼントにおいては、もらった側には確かにそれに対し何らかの見返りを送った側に提供する義務はありません。が、「ホワイトデーのお返しは3倍返しで♪」などという言葉があるように、贈った側は、何らかのお返しや相手が自身に好意的な気持ちをもってくれることを期待している側面があるケースもあるのではないでしょうか。その場合、プレゼントという行為にも利己的な側面があるといえます。

 

 また、寄付やボランティアにおいても、スポーツや旅行を楽しむのと同様に、それをすること自体が、自分に生きがいを与えてくれ、自身の満足度を高めてくれる、という側面もあるのではないでしょうか。さらには、ボランティアで得る経験や知識、人とのつながりが、自身を高め、将来のキャリア形成に影響する可能性を考慮する、という側面を期待する人も中に入るかもしれません。これらのケースを考えると、寄付やボランティアにも利己的な側面があることになります。

 

 もちろん、このように利己的な側面があるとしても、プレゼントや寄付、ボランティアが、相手に望まれていること、必要とされていることであれば、それはやはり素晴らしことです。そして、この利己的な側面があるプレゼントや寄付、ボランティアについては、経済的なインセンティブを設けることでその増進を図ることが出来ます。この時、経済学的な考えはこのような制度を考えるのに大いに役に立ちます。実際、寄付に対する所得税控除などの制度があります。

 

 利己的な側面を強調しましたが、もちろん、純粋に行動対象が幸せであることを目的とする利他の精神で行われているプレゼントも寄付もボランティアも多くあります。ただし、このようなケースであっても、利他の気持ちから発生する行為は全て素晴らしい、とは言えないことに注意が必要です。むしろ、利他を目的とする行為であるからこそ、相手が望んでいる、必要としている行為であるかが重要になるからです。プレゼントにしろ、寄付にしろ、ボランティアにしろ、相手が望んでいないにもかかわらず、それを一方的に押し付けてしまう場合、それは尊い行為とは言えなくなってしまいます。

 

したがって、利他の行為であっても、いや、利他の行為であるからこそ、いったい誰が、どのような経路で、寄付やボランティアをすることが行動対象や社会全体にとって、効率的、効果的で望ましいか、という視点の考察は重要になります。この視点においても、経済学は有用です。

 

このように、通常の取引と違い、原則無償の行為であるプレゼント、寄付、ボランティアという行為に関し、実は経済学の視点からも様々に建設的な考察が出来ます。確かに、経済学は「利他の精神を持った人々をどのように育てていくべきか」という問いには、すぐに答えを提示できるものではないかもしれません。しかし、「様々な思惑から発生する寄付やボランティアといった行為を、社会にとって望ましい方向に導くための社会制度の在り方」という問いには強い力を発揮するのです。

自身も他者も笑顔でいられることを喜ぶ純粋な心と、そのための効果的な制度、どちらも探求していきたいものです。



投稿者 石川雅也

2016年1月26日火曜日

1月は株式投資の月?


 

全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、1月のテーマは「お正月」です。年が明けて、はや1か月がたとうとしていますが、皆さんは、年末年始はどのように過ごされましたか。私は年を取るにつれて、年末年始に実家で家族と過ごす時間の貴重さが身に沁みるようになってきました。また子どもの頃はもらうことが楽しみだったお年玉も、今はあげる側に。私や兄弟の子供はまだ小さいため、今はまだ微々たるものですが、だんだんと結構な負担になってくるかもしれません(苦笑)。

 

ところで、株式市場には、「1月効果」という言葉があります。これは、株式相場では、1月の収益率が他の月よりも高くなりやすい現象のことのことを意味し、これは株式市場に見られるアノマリーの一つだといわれています。アノマリーとは相場において、はっきりとした理論的な根拠を持つわけではないが、よく当たるかもしれないとされる経験則のことです。税金対策としての売りが年末に出る一方で、年明けには新規の投資資金が流入しやすいため、などその現象の発生原因に関しては諸説ありますが、明確には分かっていません。もし、この1月効果が期待できるなら1月初めに株式投資をすれば、大人もうれしいお年玉をゲットできるかもしれません(笑)

 

しかし、この1月効果、日本の株式市場で本当に見られる現象なのでしょうか。そこで、高度経済成長期以降の日経平均株価の動向のデータをもとに、1月とそれ以外の月の日経平均株価の月次収益率を求め、下の表にまとめてみました。

 

表:日経平均株価月次収益率の比較


日経NEEDSデータより筆者作成

 

 まずこの表の1行目から、195412月以降の全期間において、確かに1月の日経平均株価の月次収益率はそれ以外の月の月次収益率にくらべ1.63%も高く、まさにこれこそが1月効果と言われるものだということが分かります。

 しかし、期間別の結果からは、さらなることが見えてきます。上の表の2行目は、高度経済成長期、3行目は安定成長期、4行目はバブル崩壊以降の景気低迷期、5行目はアベノミクス以降の期間についての結果を表しています。それぞれの期間の1月とそれ以外の月の収益率の差を見ていくと、高度経済成長期が3.22%と一番大きく、安定成長期は2.19%、景気低迷期は0.24%と、どんどんその差が小さくなり、アベノミクス以降の時期になるとむしろ-2.22%と1月の方が他の月より収益率が低くなってしまっているのです。アベノミクス以降のデータに関しては、データ数が少ないため、逆転現象が今後も続くのかは全くわかりません。したがって、データを見る限り、日経平均株価に関し、現在における1月効果の存在は、明確には確認できないといえそうです。

 

 このような過去に見られたアノマリーが、その存在が認識されるとそれ以降観察されなくなる、ということが株式市場ではしばしばおきます。アノマリーはその発生理由自体、うまく説明できないものであるため、それが消える理由も明確には説明できないのですが、株価動向の特定のパターンを投資家が広く認識すると、それを見越した行動をとるようになり、その結果、事前に株価がそれらを織り込んだ価格となるため、パターンが消えるというのが、一つの有力な説明と考えられます。いわば、株式市場は日々学び続け、進化し続けているということですね。私たちも、年始に立てた目標を忘れず、日々学び続けていきたいものです。

 

 

投稿者 石川雅也