2016年10月19日水曜日

【学問のミカタ】 競争と交渉の男女差


経済学部の安田です。全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、2016年度10月のテーマは「秋」です。大学の秋の一大イベントと言えば学園祭ではないでしょうか。東経大でも1028日(金)から30日(日)まで葵祭が開催されます。これから学園祭の準備などでキャンパスも活気づいてくると思います。

 


さて、東経大は『サンデー毎日』(2016109日号)で「女子の募集を強化する大学」として紹介されました。東経大では、結婚、出産を経ながらロングキャリアを志向する“ロンキャリ女子”を応援しており、経済学部でも来年度から女性のキャリアパスに特化した授業が開講される予定になっています。そこで、今回は、労働市場における男女間差異について紹介したいと思います。

 

現在日本の賃金は男性を100とすると女性はおよそ7273です。このような賃金格差はどのような要因から生じているのかを厚生労働省『働く女性の実情』から見ると、勤続年数と役職が大きな要因であることが示されています。

 


日本企業の管理職の多くは内部昇進であることを考えると、男性と比べ女性の勤続年数が短いことが役職比率にも影響を与えていると考えられるので、男女間の賃金格差は勤続年数が大きなカギを握っているといえそうです。その意味では、まさにロンキャリ女子が男女間差異を縮小するキーワードなのかもしれません。

 

『働く女性の実情』では、勤続年数、役職以外にも5つの要因を示していますが、その7つの要因をすべて調整すると、賃金の男女比はおよそ10090にまで縮小します。では、残りの1割にはどのような要因があるのでしょうか。

 

人事評価や営業成績、職種などいろいろな要因が寄与している可能性がありますが、近年経済学的に注目されているのが、男女間の競争や交渉に関する嗜好の差異です。つまり、男性の方が女性よりも競争が好きであったり、交渉ごとに強かったりするという実験結果が多くの研究で観察されており、そのことが労働市場での格差につながっている可能性があるということです。
 
 
確かに、受験や入社試験、昇進などは競争の一つだといえそうですし、ビジネスシーンでは取引先との交渉力も重要になってくると思います。もちろん、女性が常に競争や交渉に弱いという訳ではなく、競争力は文化や環境が大きな影響を与えていることも分かっていますし、女性は自分のためではなく、他人のために交渉すると交渉力を発揮することなども分かっています(関心のある方は参考文献を読んでみて下さい)。

 

 

経済学では、競争や交渉も非常に大きな研究テーマになっていますから、経済学部という文化・環境に身を置き、授業やゼミ活動などを通じて学んでいくことは、特に女性にとっては競争力や交渉力を高める良い機会になるのではないかと思います。
 
 

<参考文献>


ウリ・ニーズィー/ジョン・リスト『その問題、経済学で解決できます』東洋経済新報社.

ノルベルト・ヘーリング/オラフ・シュトルベック『人はお金だけでは動かない』NTT出版.
 
 

 
投稿者:安田宏樹


 東京経済大学のブログ
******************************************
【経済学部】 競争と交渉の男女差
【経営学部】 秋冬の売場スタート!
【コミュニケーション学部】 芸術の秋を楽しむ
【全学共通教育センター】フランスの秋あれこれ
******************************************



 

2016年9月20日火曜日

【学問のミカタ】料理こそ経済学!

皆さん、こんにちは。
9月統一テーマ「食」を担当する野田です。今日は、経済学の教材として料理を考えてみたいと思います。


大学生の中には家族のために夕食を作ったり、一人暮らしを契機に料理をはじめたという人が多いかと思います。図にあるとおり、そもそも日本では、共働き世帯が年を追うごとに増えています。ということは、男性でも女性でも家事、とくに料理ができなければなりません(すべて外食というのは、金銭的に厳しいでしょう)。仕事によれば、女性の方が遅く帰ることも少なくないでしょう。男性にとって、料理は非常に重要な恋愛・生活ツールなのです。

最近、カレー粉ではなくスパイスからカレーを作ることに興味を持っています。いろいろ調べた結果、簡単にできそうなレシピを見つけました。

このレシピのいいところは、4種類(ターメリック、クミン、レッドペッパー、コリアンダー)の基本スパイスと塩を大さじ1ずつ配合するだけで良いのです(ガラムマサラは仕上げ用で数振りでよい)。しかしどのスパイスも持っていなかったので、近所のスーパーで買い求めました。



ここで問題となるのが、5種類のスパイスを一度に揃える必要があったということです。
税抜き価格で、1185円でした(ターメリック:255円、クミン:185円、レッドペッパー:190円、コリアンダー:190円、ガラムマサラ:365円)。

ものを作るのに最初に必要な購入という意味で、これらは初期費用とよばれています。維持管理費用よりも初期費用は高くつきます。実際、1185円は少し高く感じるかもしれません。

しかし、安心してください。
基本4種のスパイスは3-4回使えますし、ガラムマサラはもっと使えます。話を簡単にするために、基本4種のスパイスは4回、ガラムマサラは20回で使い切るとすれば、一回あたりの値段は約223円(205円+18.25円)になります。さらにこのレシピは3-4人前なので、冷凍できれば、さらに一食あたりの費用は下がります。これで美味しいご飯が食べられるのなら、決して高くはないのです。

経済学は、ある予算の中で、便益と費用の差、つまり純便益を最大化しようとするのが、人間の行動原理とみなしてきました。これはまさに、料理にあてはまります。決められた予算のなかで食材を買い、料理を作り、自分や家族の幸せな顔をみながら食べるのです。しかも料理は、人に創意工夫を促すので、仕事にも役に立ちます。



私にとって大事なことですが、自分が料理を作れば、嫌いな食材を極力使わずに済みます。ちなみに私は玉ねぎが嫌いなため、今回のカレーにはセロリで代用しました。皆さんも創意工夫しながら料理を楽しみましょう(写真は上記レシピに基づくカレーです。辛いですが胃もたれしなかったです。ちゃんと私が作りました)。

経営学部ブログ 【学問のミカタ】世の中の需要の大きさは胃袋の数・・・

現代法学部ブログ 【学問のミカタ】貧しい食事 ~食について~


投稿者:野田浩二




2016年8月23日火曜日

会社の利益は誰のもの?


全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、2016年度8月を担当する石川です。今月のテーマは「会社」です。この誰もが知っている会社という言葉、辞書で引くと、「会社法により設立された,営利を目的とする社団法人」と出てきます。

 

 このように辞書には営利を目的とするとありますが、「会社経営の最終目的は、利益の獲得である。」と断言してしまっていいのか、については様々に議論されるところです。ただ、利益のみを目的としていたとしても、はたまた、社会貢献を目的としていたとしても、利益を上げ続けることが出来ない限り、会社を存続させていくことは出来ません。また、社会に貢献している会社であるなら、その貢献の対価として自然と利益を獲得することは出来るはずです。やはり、会社にとって利益は、最重要なもののひとつであることは間違いありません。


 また、「会社の目的は何か」、というテーマと同じように、様々に議論が分かれるのが、「会社は誰のものか」というテーマです。会社には、経営陣、従業、株主、顧客、仕入れ先企業、取引先銀行など、多くの利害関係者(ステークホルダー)がいます。税金のことや環境のことまで考えると政府や地域住民も立派なステークホルダーであり、会社はすべてのステークホルダーの利害を考えていく必要があります。


 では、会社が獲得した利益は、誰のものになるのでしょうか?この点に関しては、実は利益にもいくつか種類があり、どの利益の視点に立つかによって、違ってきます。ここでは会社の中でも、最もポピュラーな株式会社で考えてみましょう。




 まず会社の利益の源泉は、会社の本業を通して獲得する売上高です。ここから会社経営にかかる様々な費用や本業の損益を差し引いていくことで各種の利益が計算されます。具体的には、売上高から売上原価を引くと、「売上総利益」。そこから販売費及び一般管理費(販管費)を引くと「営業利益」。そこから営業外利益を足し、営業外費用を引くと「経常利益」。そこから特別利益を足し、特別損失を引くと「税引き前当期純利益」。そこから、税金を引くと「当期純利益」となります。


 細かい説明は、省略しますが、利益計算において、売上高から差し引いていくものを簡単に説明すると、売上原価は主に仕入れ先企業に支払う原材料費、販管費は従業員の給与や役員報酬などの人件費、オフィスの賃貸料、広告宣伝費などの営業上の諸経費、営業外費用は主に債権者に対する支払利息、特別損失は火災損失などの突発的な損失、税金は税金です。


 ここからわかるように、これらの費用とは、(特別損失を除き)各種のステークホルダーへの支払いであり、受け取る側からしたら、それこそが会社からの利益の還元であるといえます。これらが費用と捉えられるのは、最後の利益である「当期純利益」を受け取る立場の視点に立った場合と言え、その立場にあるのが株主です。この点から株主は「残余利益請求権者」と呼ばれます。


 ここから株主は、利益請求に関し、他のステークホルダーより高いリスクに直面していることが分かります。なぜなら、売上高、利益が減少したとき、取引先や従業員、経営陣などは、そこから優先的に支払いを受けることが出来ますが、その結果として残余利益がなくなってしまうと、株主は何も受け取れなくなってしまうからです。反対に、売上高、利益が増加したときは、株主の受け取る残余利益は大きく増加します。もちろん、経営陣の報酬や従業員の給料なども、売上高や利益に応じて変動しますが、株主の利益はそれをはるかに上回る率で変動するのです。


 このように株主は高いリスクにさらされるので、当然、そのリスクに見合った投資収益率を望みます。したがって、当期純利益に関し、株主が望む以上の利益を出せている会社となって、初めて会社は全ての費用を上回る利益(超過利益)を上げているということが出来ます。特に、独占などでなく、市場競争の中で超過利益を上げられている企業は、まさに社会に付加価値を創造している企業といえるでしょう。経済学では、この付加価値の創造こそ企業活動の真骨頂と考えます。


 このように、費用といっても利益といっても、立場、視点によって変わるものですが、付加価値を生み出している、全てのステークホルダーが望む以上の利益を社会にもたらしている企業かどうかという視点に立つ場合、単に会計上黒字であるかどうかよりシビアな視点が必要となるのです。


投稿者 石川雅也


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【ブログ:学問のミカタ】今月の全学部共通テーマは「会社」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
各学部の先生(学問の味方)が、その学問分野の専門家としての
物事の捉え方(学問の見方)をブログを通して伝えます。
今月の全学部共通テーマは「会社」。
同じテーマでも学ぶ分野の違いによって視点は大きく異なります。この【学問のミカタ】を学びたい学問分野探しの参考にしてもらえると嬉しいです。

経済学部 「会社の利益は誰のもの?」
http://tkueconomics.blogspot.jp/

経営学部 「販売会社ってなに?」http://tkubiz.blogspot.jp/2016/08/blog-post.html

コミュニケーション学部 「「会社」はコミュニケーションの宝庫」http://comtku.blogspot.jp/

現代法学部 「世界で最初の株式会社って?」http://genho-tku.blogspot.jp/

全学共通教育センター「「会社」=“Company”?」http://tkucenter.blogspot.jp/

2016年7月18日月曜日

【学問のミカタ】 試験対策として重要なのは・・・!?

経済学部の安田宏樹です。全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、2016年度7月のテーマは「夏」です。東京経済大学でもそろそろ1期の期末試験が本格的に始まります。この時期は、キャンパス内で試験について情報交換を活発に行い、試験対策に努めている大学生の姿が目につきます。
 


では、なぜ、試験を控えた大学生は情報を頻繁に交換しているのでしょうか。経済学では情報も非常に大きな価値があると考えます。しかしながら一般的に取引当事者間では、持っている情報に差があることはしばしばありますよね。これを経済学で「情報の非対称性」といいます。この情報の非対称性に関する研究で2001年に3人の経済学者がノーベル経済学賞を受賞しました(詳しくは一橋大学の小野浩先生の論考をご参照下さい)。

 

 

例として、就職活動における大学生と企業を考えてみましょう。企業はより優秀な大学生を採用したいと考えるはずですが、候補者の大学生の本当の能力や実力、人間性を短時間の面接などで完全に把握するのは難しいですよね。大学生は自分の能力や実力を把握しているとしても、企業にはそれが伝わりにくい。これが情報の非対称性です。では、大学生は自分の能力や実力をどのように企業に示せばよいのでしょうか。

 

 

いろいろな方法があると思いますが、例えば、大学の成績を提示する、取得資格を提示する、特待生であることを提示するなどの方法が考えられます。この成績や取得資格、特待生など、企業に自分の能力を示す項目を「シグナル」と呼びます。情報の非対称性がある時には自分をアピールするシグナルがとても重要な意味を持ちます(これを「シグナリング理論」といいます。詳しくは千葉大学の佐野晋平先生の論考をご参照ください)。
 

今度は企業サイドから考えてみましょう。企業からすると候補者の本当の実力は分かりにくいものです。そこで、候補者が多数集まる大企業では応募者の履歴書やエントリーシートなどの提出資料を基にふるいにかけることがあります。これを「スクリーニング」といいます。

 


このように情報の非対称性が存在する場合、取引の当事者は自分の正確な情報をシグナルを通して相手に伝達すること、そして、相手の情報をシグナルを利用して把握することが情報の非対称性を解消するためには重要だといえます。


最近では、ぐるなび食べログなどのグルメサイトが人気を集めています。これらのサイトが利用される理由の一つとして、お店とお客さんの間の情報の非対称性を解消する情報を提供していることが考えられます。取引の当事者間でなくても信用できる情報が提供できれば、情報の非対称性を解消する有力な手段になるという事例だと思います。
 


 
  

では、大学入試を控えた受験生にはどのような情報の非対称性が存在するでしょうか。受験生が持つ志望校に対する情報と志望校が持つ情報には情報の非対称性があると考えられます。そこで、最近では夏休み期間中に多くの大学がオープンキャンパスを開催しています。オープンキャンパスにはさまざまな目的があると思いますが、情報の非対称性を解消しようという試みの一つであると経済学的に解釈できると思います。



 

東京経済大学では、731日(日)、81日(月)、827日(土)、828日(日)の4日間、オープンキャンパスが開催されます。オープンキャンパスでは、学部説明会や体験授業、学食体験など、東京経済大学をよく知ることができるプログラムが満載です。予約不要で入退場も自由ですから、是非一度国分寺の街や国分寺キャンパスの魅力に直に触れていただければうれしいです。


 投稿者:安田宏樹

 
 東京経済大学のブログ

******************************************
【経済学部】 試験対策として重要なのは・・・!?
【経営学部】 暑い季節の悩みは何ですか?

【コミュニケーション学部】なつのいちにち
  【現代法学部】 東京物語と夏、老いた親の居場所
【全学共通教育センター】だめよ〜だめだめ、サンゴの移植でさんご礁は復活しないの
******************************************







 

2016年6月21日火曜日

公共交通機関はぜいたく品?

【学問のミカタ】公共交通機関はぜいたく品?


経済学部准教授の野田と申します。専門は環境経済学、環境政策論です。
今日は私が、「乗り物」をテーマに執筆します。よろしくお願いします。

東京に住んでいると、JRだけでなく私鉄さらには地下鉄まで、実に多くの路線で電車を利用することができます。また路線バスも無数に走っています。これらの鉄道やバスは、皆の役に立つという意味で公共交通機関とよばれ、その料金は比較的安いですよね。たとえば国分寺から横浜中華街に行くとき、一番安いルートで890円(1時間ちょっと)になります。私たちは日々、公共交通機関の利便性を享受しており、それを当然のものと考えています(逆に、電車の遅延でイライラしますよね)。

しかし日本全体で見ると、このような利便性の高い公共交通機関はぜいたく品といえるかもしれません。地方都市になればなるほど、公共交通機関ではなく個人所有の自動車が移動手段の要となります。実際、地方鉄道事業や地方バス事業の多くは赤字であり、その存続が厳しいものになりつつあるようです。この問題の専門家のひとりは、次のように指摘します。

-------------
「地域公共交通は、『自家用車への過度の依存による乗客減少⇒事業者のコスト削減によるサービス低下⇒一層の乗客減少』という負のスパイラルに陥っている。」(岡本常将(2009)「地域公共交通の活性化について―富山・金沢を事例に―」『レファレンス』20096月号、63頁)
 -----------

この問題には、東京と地方との経済格差(東京への一極集中)という経済問題が深く関わっています。公共交通機関をぜいたく品とすることなく多くの人に役立たせるには、どうすればよいでしょうか。解決案のひとつが、古くて新しい路面電車、今風にいえば、LRTLight Rail Transit)です。


 熊本市の路面電車

熊本市や長崎市の路面電車は有名ですし、その地域の文化的価値をも高めています。また、まちづくりの柱としてLRTを導入した場所としては、アメリカ合衆国オレゴン州のポートランドや富山市なども有名です。環境重視の時代変化にあわせて、大都市圏が捨てた古い公共交通(路面電車)が見直され、新たな付加価値が与えられようとしています(東京の路面電車は、都電荒川線で運用されています)。


 ポートランドのLRT

皆さんもどんどん路面電車を利用してみてください。利用者が増えればそれだけ鉄道事業者の収益が良くなり、路面電車の持続可能性が高まります。そのためにも、ぜひ多くの都市に行って楽しんで欲しいと思いますし、わたしたちは観光者として地方経済に貢献できるのです。


最後に、私がいま気になっていることを書き留めておきます。近年、外国からの観光客が増加しております。新幹線に乗ると、彼ら/彼女らは大きなキャリーバックをどこに置いて良いのか迷っている風景を目にします。もし今後も外国からの観光客を増やしたければ、この「バック置き場問題」の改善(保管場所の増設など)が必要になるかもしれませんね。

【他学部のブログ紹介】
経営学部:「車が減ると駐車場は要らなくなる???」
http://tkubiz.blogspot.jp/2016/06/blog-post_13.html

コミュニケーション学部:「「乗り物」をデザインする力」http://comtku.blogspot.jp/2016/06/blog-post_19.html

現代法学部:「ベビーカー問題にみる、子育て環境のバリアフリー化について」
http://genho-tku.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html

センター:「急ブレーキは危険です」
http://tkucenter.blogspot.jp/2016/06/blog-post.html