2016年1月26日火曜日

1月は株式投資の月?


 

全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、1月のテーマは「お正月」です。年が明けて、はや1か月がたとうとしていますが、皆さんは、年末年始はどのように過ごされましたか。私は年を取るにつれて、年末年始に実家で家族と過ごす時間の貴重さが身に沁みるようになってきました。また子どもの頃はもらうことが楽しみだったお年玉も、今はあげる側に。私や兄弟の子供はまだ小さいため、今はまだ微々たるものですが、だんだんと結構な負担になってくるかもしれません(苦笑)。

 

ところで、株式市場には、「1月効果」という言葉があります。これは、株式相場では、1月の収益率が他の月よりも高くなりやすい現象のことのことを意味し、これは株式市場に見られるアノマリーの一つだといわれています。アノマリーとは相場において、はっきりとした理論的な根拠を持つわけではないが、よく当たるかもしれないとされる経験則のことです。税金対策としての売りが年末に出る一方で、年明けには新規の投資資金が流入しやすいため、などその現象の発生原因に関しては諸説ありますが、明確には分かっていません。もし、この1月効果が期待できるなら1月初めに株式投資をすれば、大人もうれしいお年玉をゲットできるかもしれません(笑)

 

しかし、この1月効果、日本の株式市場で本当に見られる現象なのでしょうか。そこで、高度経済成長期以降の日経平均株価の動向のデータをもとに、1月とそれ以外の月の日経平均株価の月次収益率を求め、下の表にまとめてみました。

 

表:日経平均株価月次収益率の比較


日経NEEDSデータより筆者作成

 

 まずこの表の1行目から、195412月以降の全期間において、確かに1月の日経平均株価の月次収益率はそれ以外の月の月次収益率にくらべ1.63%も高く、まさにこれこそが1月効果と言われるものだということが分かります。

 しかし、期間別の結果からは、さらなることが見えてきます。上の表の2行目は、高度経済成長期、3行目は安定成長期、4行目はバブル崩壊以降の景気低迷期、5行目はアベノミクス以降の期間についての結果を表しています。それぞれの期間の1月とそれ以外の月の収益率の差を見ていくと、高度経済成長期が3.22%と一番大きく、安定成長期は2.19%、景気低迷期は0.24%と、どんどんその差が小さくなり、アベノミクス以降の時期になるとむしろ-2.22%と1月の方が他の月より収益率が低くなってしまっているのです。アベノミクス以降のデータに関しては、データ数が少ないため、逆転現象が今後も続くのかは全くわかりません。したがって、データを見る限り、日経平均株価に関し、現在における1月効果の存在は、明確には確認できないといえそうです。

 

 このような過去に見られたアノマリーが、その存在が認識されるとそれ以降観察されなくなる、ということが株式市場ではしばしばおきます。アノマリーはその発生理由自体、うまく説明できないものであるため、それが消える理由も明確には説明できないのですが、株価動向の特定のパターンを投資家が広く認識すると、それを見越した行動をとるようになり、その結果、事前に株価がそれらを織り込んだ価格となるため、パターンが消えるというのが、一つの有力な説明と考えられます。いわば、株式市場は日々学び続け、進化し続けているということですね。私たちも、年始に立てた目標を忘れず、日々学び続けていきたいものです。

 

 

投稿者 石川雅也