経済学部の安田宏樹と申します。今年度から経済学部のブログ作成に携わることになりました。よろしくお願い申し上げます。
全学部コラボ企画「学問のミカタ」、2016年度4月のテーマは「春」です。東京経済大学でも4月1日から新年度がスタートし、キャンパスは非常に活気づいています。「新年度がスタート」と書きましたが、実はこの「年度」が経済学的に非常に大きな意味を持つことが分っています。今回はそのことをご紹介します。
日本では4月から新年度がスタートしますので、4月から6月生まれの児童・生徒は相対的に「早く生まれた」グループになり、(翌年の)1月から3月に生まれた児童・生徒は(一般的に「早生まれ」と呼ばれますが)相対的に「遅く生まれた」グループになります。
この誕生月によって、成績に差があることが多くの研究で明らかになっています。具体的には、4月から6月生まれの児童・生徒は相対的に成績が良く、1月から3月生まれの児童・生徒は相対的に成績が良くないという結果が出ており、このことを「相対年齢効果」と呼んでいます。
例えば、東京大学の川口先生と一橋大学の森先生の研究によると、相対年齢効果は小学生、中学生、高校生のいずれにも観察されるといいます。また、一橋大学の小塩先生と新潟大学の北條先生の研究でもアジアの5か国(日本、韓国、台湾、香港、シンガポール)すべてで相対年齢効果が確認されています。
では、相対年齢効果は学力だけに見られるのでしょうか。この点を昨年度の安田ゼミのゼミ生が研究テーマに選びました。調査対象は、2015年のJリーグ登録の1406名(外国人選手を除く、J1・J2・J3の全選手)とNPB登録の全選手745名の誕生月です(結果は図1・図2)。
図1 Jリーグ登録全選手(N=1406)の四半期別割合(%)
図1から、4-6月生まれの選手が多く1-3月生まれが少ないという、相対年齢効果が存在していることが分かります。
図2 NPB登録全選手(N=745)の四半期別割合(%)
また、プロ野球選手に関しても、4-6月生まれが多く1-3月生まれが少ないという、相対年齢効果の存在が確認されました。
では、反対に1-3月生まれに多い職業はあるのでしょうか。こうしたことを調べるだけでも素晴らしい卒業論文のテーマになると思います。読者の皆さんも是非機会があればゼミに入り、関心のあるテーマで論文を書くチャレンジをしてみて下さい。
最後に強調しなければならないことは、相対年齢効果の研究は、偏見を助長するために行われているわけではないということです。むしろ年度を何月からスタートしても必然的に相対的に生まれ月の早いグループと遅いグループが出てしまうのですから、相対年齢効果を縮小させるような政策や施策、配慮が必要ではないかということで今回ご紹介しました。
ちなみに、今年度の安田ゼミのゼミ長である栗原君は4月1日生まれです(一学年は4月2日生まれから翌年の4月1日生まれの児童・生徒で構成されます)。同級生の中で最も生まれは遅いですが、先頭に立ってみんなを引っ張ってくれています。
参考文献
川口大司・森啓明(2007)「誕生日と学業成績・最終学歴」『日本労働研究雑誌』No.569, pp.29-42.
小塩隆士・北條雅一(2012)「学力を決めるのは学校か家庭か」樋口美雄・財務省財務総合政策研究所編著『グローバル社会の人材育成・活用』第2章, 勁草書房, pp.68-90.
植松・上石・涌井・大久保・斉木(2015)「誕生月がプロスポーツ選手に与える影響」『2015年度安田宏樹ゼミナール研究論文』.
投稿者:安田宏樹
東京経済大学のブログ
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