経済学部の安田宏樹です。全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、2016年度7月のテーマは「夏」です。東京経済大学でもそろそろ1期の期末試験が本格的に始まります。この時期は、キャンパス内で試験について情報交換を活発に行い、試験対策に努めている大学生の姿が目につきます。
では、なぜ、試験を控えた大学生は情報を頻繁に交換しているのでしょうか。経済学では情報も非常に大きな価値があると考えます。しかしながら一般的に取引当事者間では、持っている情報に差があることはしばしばありますよね。これを経済学で「情報の非対称性」といいます。この情報の非対称性に関する研究で2001年に3人の経済学者がノーベル経済学賞を受賞しました(詳しくは一橋大学の小野浩先生の論考をご参照下さい)。
例として、就職活動における大学生と企業を考えてみましょう。企業はより優秀な大学生を採用したいと考えるはずですが、候補者の大学生の本当の能力や実力、人間性を短時間の面接などで完全に把握するのは難しいですよね。大学生は自分の能力や実力を把握しているとしても、企業にはそれが伝わりにくい。これが情報の非対称性です。では、大学生は自分の能力や実力をどのように企業に示せばよいのでしょうか。
いろいろな方法があると思いますが、例えば、大学の成績を提示する、取得資格を提示する、特待生であることを提示するなどの方法が考えられます。この成績や取得資格、特待生など、企業に自分の能力を示す項目を「シグナル」と呼びます。情報の非対称性がある時には自分をアピールするシグナルがとても重要な意味を持ちます(これを「シグナリング理論」といいます。詳しくは千葉大学の佐野晋平先生の論考をご参照ください)。
今度は企業サイドから考えてみましょう。企業からすると候補者の本当の実力は分かりにくいものです。そこで、候補者が多数集まる大企業では応募者の履歴書やエントリーシートなどの提出資料を基にふるいにかけることがあります。これを「スクリーニング」といいます。
このように情報の非対称性が存在する場合、取引の当事者は自分の正確な情報をシグナルを通して相手に伝達すること、そして、相手の情報をシグナルを利用して把握することが情報の非対称性を解消するためには重要だといえます。
最近では、ぐるなびや食べログなどのグルメサイトが人気を集めています。これらのサイトが利用される理由の一つとして、お店とお客さんの間の情報の非対称性を解消する情報を提供していることが考えられます。取引の当事者間でなくても信用できる情報が提供できれば、情報の非対称性を解消する有力な手段になるという事例だと思います。
では、大学入試を控えた受験生にはどのような情報の非対称性が存在するでしょうか。受験生が持つ志望校に対する情報と志望校が持つ情報には情報の非対称性があると考えられます。そこで、最近では夏休み期間中に多くの大学がオープンキャンパスを開催しています。オープンキャンパスにはさまざまな目的があると思いますが、情報の非対称性を解消しようという試みの一つであると経済学的に解釈できると思います。
東京経済大学では、7月31日(日)、8月1日(月)、8月27日(土)、8月28日(日)の4日間、オープンキャンパスが開催されます。オープンキャンパスでは、学部説明会や体験授業、学食体験など、東京経済大学をよく知ることができるプログラムが満載です。予約不要で入退場も自由ですから、是非一度国分寺の街や国分寺キャンパスの魅力に直に触れていただければうれしいです。
投稿者:安田宏樹
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