経済学部の安田です。全学部コラボ企画、「学問のミカタ」、2016年度10月のテーマは「秋」です。大学の秋の一大イベントと言えば学園祭ではないでしょうか。東経大でも10月28日(金)から30日(日)まで葵祭が開催されます。これから学園祭の準備などでキャンパスも活気づいてくると思います。
さて、東経大は『サンデー毎日』(2016年10月9日号)で「女子の募集を強化する大学」として紹介されました。東経大では、結婚、出産を経ながらロングキャリアを志向する“ロンキャリ女子”を応援しており、経済学部でも来年度から女性のキャリアパスに特化した授業が開講される予定になっています。そこで、今回は、労働市場における男女間差異について紹介したいと思います。
現在日本の賃金は男性を100とすると女性はおよそ72~73です。このような賃金格差はどのような要因から生じているのかを厚生労働省『働く女性の実情』から見ると、勤続年数と役職が大きな要因であることが示されています。
日本企業の管理職の多くは内部昇進であることを考えると、男性と比べ女性の勤続年数が短いことが役職比率にも影響を与えていると考えられるので、男女間の賃金格差は勤続年数が大きなカギを握っているといえそうです。その意味では、まさにロンキャリ女子が男女間差異を縮小するキーワードなのかもしれません。
『働く女性の実情』では、勤続年数、役職以外にも5つの要因を示していますが、その7つの要因をすべて調整すると、賃金の男女比はおよそ100:90にまで縮小します。では、残りの1割にはどのような要因があるのでしょうか。
人事評価や営業成績、職種などいろいろな要因が寄与している可能性がありますが、近年経済学的に注目されているのが、男女間の競争や交渉に関する嗜好の差異です。つまり、男性の方が女性よりも競争が好きであったり、交渉ごとに強かったりするという実験結果が多くの研究で観察されており、そのことが労働市場での格差につながっている可能性があるということです。
確かに、受験や入社試験、昇進などは競争の一つだといえそうですし、ビジネスシーンでは取引先との交渉力も重要になってくると思います。もちろん、女性が常に競争や交渉に弱いという訳ではなく、競争力は文化や環境が大きな影響を与えていることも分かっていますし、女性は自分のためではなく、他人のために交渉すると交渉力を発揮することなども分かっています(関心のある方は参考文献を読んでみて下さい)。
経済学では、競争や交渉も非常に大きな研究テーマになっていますから、経済学部という文化・環境に身を置き、授業やゼミ活動などを通じて学んでいくことは、特に女性にとっては競争力や交渉力を高める良い機会になるのではないかと思います。
<参考文献>
ウリ・ニーズィー/ジョン・リスト『その問題、経済学で解決できます』東洋経済新報社.
ノルベルト・ヘーリング/オラフ・シュトルベック『人はお金だけでは動かない』NTT出版.
投稿者:安田宏樹
東京経済大学のブログ
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【全学共通教育センター】フランスの秋あれこれ
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