経済学部の安田宏樹と申します。昨年度から引き続き、経済学部のブログ作成に携わらせていただきます。よろしくお願いいたします。
全学部コラボ企画「学問のミカタ」、今回は昨年のブログで取り上げました「相対年齢効果」について、再び取り上げてみたいと思います。
まず、「相対年齢効果」とは何かということですが、新年度のスタートは国によって異なります。日本では一般的に4月から始まりますが、アメリカ・イギリス・中国など9月に新年度が始まる国も多いです(日本でも9月入学・卒業の制度がある大学が増えていますよね)。
日本の場合は、4月から6月生まれの児童・生徒は同じ学年の中で相対的に「早く生まれた」グループになり、(翌年の)1月から3月に生まれた児童・生徒は同じ学年の中でも相対的に「遅く生まれた」グループになります。そして、生まれ月によるパフォーマンスの違いを「相対年齢効果」と呼び、昨年のブログでは、誕生月によって成績やプロ選手の人数に差がついている(「早く生まれた」グループに優位性がある)という研究を紹介しました。
今回は安田ゼミのゼミ生が「相対年齢効果」に関する新しい発見をしてくれましたので、ご紹介したいと思います。
まず、4年生の小野寺君がテーマに選んでくれたのがプロゴルフです。小野寺君は、一般社団法人日本ゴルフツアー機構のサイトから男性プロゴルファー130名の選手データを、一般社団法人日本女子プロゴルフ協会のサイトから女性プロゴルファー212名の選手データを取得し、誕生月を調べました。
その結果、図1・図2にあるように、男性では相対年齢効果が確認できなかったものの、女性プロゴルファーでは4月から6月生まれの選手が最も多く、1月から3月生まれの選手が最も少ないという、相対年齢効果を確認できる結果となりました。
次に、同じく4年生の上石君がテーマに選定したのがスペイン国籍のプロサッカー選手です。上石君は、ヨーロッパの主要7か国(伊・仏・独・英・蘭・西・葡)の最上位リーグの全150チームに所属する、スペイン国籍の選手の相対年齢効果について調べています(各クラブの公式ウェブサイトから、2016-2017シーズンの一軍登録選手を抽出)。
スペインでは、1月から年度が始まるようですが、初等教育をスペインで過ごしたスペイン国籍選手のみを分析対象とした結果が図3です。
図3から明らかなように、1月から3月生まれの選手が最も多く、反対に、10月から12月生まれの選手が最も少なく、相対年齢効果が確認されました。月別に見ると、1月が最多の47名、12月は最小の12名と4倍近い差がありました。このように、スペイン国籍のサッカー選手も相対年齢効果が観察されました。
昨年のブログでも触れましたが、相対年齢効果の研究は、偏見を助長するために行われているわけではありません。年度が何月から始まっても、相対的に早く生まれたグループと遅く生まれたグループは必ず存在するわけですから、相対年齢効果を縮小させるような政策や施策、配慮が必要ではないかという問題意識で研究が行われています(日本の小学校受験では、生まれ月を考慮した選考が広く行われているようです)。
最後にスポーツだけでなく、囲碁や将棋といった頭脳ゲームについても調べたグループがあります(小野寺・青木・岸グループ)。結果の詳細は省きますが、将棋のプロ棋士は男女共に4月から6月生まれが最も多く、1月から3月生まれが2番目に多いという興味深い結果となりました(囲碁では将棋のような明確な傾向は観察されませんでした)。
身近な職業を生まれ月から考察してみると、興味深い発見があるかもしれませんね。
投稿者:安田宏樹
東京経済大学のブログ
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