2017年11月13日月曜日

【学問のミカタ】日本の大学生は多すぎる!?

経済学部の安田です。

東京経済大学では11月の葵祭(大学祭)が終了し、秋から冬への移り変わりを実感する季節となりました。

全学部コラボ企画「学問のミカタ」、今回は「日本の大学生は多すぎるのか」について取り上げてみたいと思います。




今年も学校法人の認可を巡るニュースがありましたが、ちょうど5年前の11月にも、当時の田中眞紀子文部科学大臣が審議会が答申した3校の新設を大学の質の低下などを理由に認可しないことを表明し、大きな話題となりました。

その後、認可はされたのですが、日本の大学や大学生数増加による質の低下を懸念する声は根強いように思います。

今回は、この点について経済学的に考えてみたいと思います。

まず、大学入学者数を見てみると、2016年には約62万人が大学に入学しており、趨勢的に大学生は増加していることがわかります。




次に、大学進学率を見ると、2016年で男子55.6%、女子48.2%となっており、特に、女子の進学率は過去最高を更新し、大学生の増加を後押ししていることがわかります。



また、国際的に見た日本の特徴として、大学生の卒業率が高いことが挙げられます。

OECDEducation at a Glanceによると、日本の大学卒業率はOECDで最も高く、およそ9割の入学者が卒業しています(したがって、以下では単純化のため、大学生数≓大卒者として議論します)。






このように大学生の人数は確かに増加をしており、大学生の供給量は増加しているといえます。

次に、賃金に着目したいと思います。

需要と供給という、経済学の基本的な概念を用いて大卒者の増加について考えると、大卒者の供給量が企業の労働需要以上に増加しているとすれば、大卒者の「価値」が下がると考えられるため、大卒者の賃金は低下すると考えられます。

反対に、大卒者の供給量が増加したとしても、それ以上に大卒需要が増えていれば、賃金は上昇している可能性もあります。

そこで、大卒・高卒賃金比率を見ていきたいと思います。

大卒・高卒賃金比率に注目する理由は、大卒の労働需要は他の教育水準(例えば高卒者)との相対的な比較で決まっていると考えられるからです。




上図を見ると、男女ともに大卒・高卒賃金比率は拡大傾向にあることが分かります(データは『賃金構造基本統計調査』を基に東京大学の川口先生の論考と同様の手法で筆者が算出しました)。

現在では、大卒者の賃金は高卒者のおよそ1.5倍であり、さらに趨勢的に拡大している様子も見て取れます。

このことは、確かに大卒者は増加していますが、それ以上に社会全体では大卒需要が増加していることを示唆しています。

「日本の大学生は多すぎるのか」という問に対して、経済学的に考えると「そうとはいえない」ということになるかと思います。

このように経済学的思考は多くの事柄に適用できる汎用性の高い分析ツールですから、皆さんも機会がありましたら、経済学を学んでいただければうれしいです。

投稿者:安田宏樹

東京経済大学のブログ

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